ちぇっ、朝からついてない・・・電車に遅れるなんて。

次の電車だと、駅から走って、ぎりぎりセーフってところか・・・テスト最終日だって言うのに。

「あ、コージ、お前も乗り遅れたのか？」

コースケが声をかけてくる。

「コースケ、お前もか？」

こいつは、コースケ・・・中原浩輔。小学校からの親友だ。

「テスト最終日だと思ったら、嬉しくてな、つい二度寝しちまった」

うーん、なるほど。それで、お肌つるつるって訳か。

「よ、余裕だなあ・・こっちは、朝まで勉強だぜ。もう、眠くって」

そういいながら、おおきなあくびをする。

「本当に、眠そうだな。・・・それにしても、今回は珍しく頑張ってるな」

「お小遣い懸かっているからな・・」

「は？何だって？」

「成績が下がったら、お小遣い半分なんだよ」

「はは・・、ついに、コージのお袋さんも・・・」

コースケが、目を細めている。

「な、なんだよ、お前だって似たようなもんだろう」

「おまえと一緒にするな。俺は、ちゃんと中ほどはキープしてるぞ」

「う」

ま、確かに・・・成績でも、ゲームでも、こいつには勝ったことはないかも。

「テスト直前にやったって無駄だぞ。普段から、やらないとな」

コースケが追い討ちをかける。

「う」

言葉に詰まる。だが、コースケ、言う事も尤もだが、あまり説得力ないぞ。

中ほどをキープってのは。まあ、口にはださないでおく。

「ところで状況は、どうなんだ」

「ああ、今日の科目は得意だからな。一気に挽回するぞ」

「・・・・得意って言ったってなあ、お前の中での話だよなあ」

「う」

痛いところをついてくる・・・。それにしても、今日のコースケは、きついな。

「ところでさあ、今日で試験終りだろう、でさ、ぱーっとさ、やらないか？

・・祐樹達も誘ってあるんだ」

「今日か？」

「ああ、学校も早く終るし、いい本も手に入れたし」

今日は金曜日だから、明日は学校休みだし、問題はないよな。うん。

ん？コースケの顔がにやけてる・・・いい本って、もしかして・・・。

お前そんな顔するから、女にもてないんだぞ。

・・・俺も、他人の事は言えないが。

「・・・・」

「もちろん来るよな」

コースケが念を押す。

「ああ」

いい本に釣られて行くわけじゃあないぞ。友人関係は大事にしないとな。うん。

「・・・・」

ん、何？架線事故の為、電車が十分程分遅れてる？

「コージ、今の放送聞いたか？半額決定だな。今日のは、『反省会』ってことにするか」

「・・・・」


待ちに待った電車がホームに入ってくる。

少し焦り気味で、電車に乗り込んだが、空いている車内と、流れている景色をみていたら、

なんか、どうでもいいような気がしてきた。



「おい、コージ。降りないのか？」

はっ！

あ、いかんいかん、気持ちよく電車に揺られたら、つい居眠りしてしまった。

コースケがいなかったら、不戦敗だったぜ。既に、遅れていると言うのに。危ない、危ない。

「おまえ、それにしても器用だな、立ったまま寝るなんて。・・大丈夫か？」

「ああ・・よし、じゃあ、学校まで走るか」

そう言って、改札口へ急ぐ。



「はー、はー、チャ、チャイム、鳴ってるぞ。コージ」

聞こえてるって・・・う〜、寝不足が祟っている。き、きつい。



試験が始まっている教室に駆け込む。監督の先生に向かって、謝る。

「す、すいません。遅れました。はー、はー、で、電車が」

「はー、はー、で、電車に・・・遅れて、す、すいません」

え？思わず、お互いの顔をみる。

「遅れた？それは、電車がか？電車にか？」

監督の先生が渋い顔で訊いてくる。

「りょ、両方です」

クラス中が笑いに包まれる。

「静かに・・・まあいい。早く席に着け」

「「は、はい」」

こうして、試験最終日は始まったのだが・・・結果は言うまでもない・・・か。



第１話　終了




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