「へ〜、綺麗に片付けてあるのね」

晴香とふたりで2階の晴香の部屋に来たんだけど・・・晴香が褒めてくれるなんて、

ちょっと嬉しい・・・

退屈しのぎに、少し模様替えをしてみたんだけど・・・晴香、気に入ってくれるかどうか、

心配だったんだ。

「ホント?」

「うん、女の子の部屋みたい」

「・・・」

どーゆー意味だろう?

元々、晴香の部屋って、大きなぬいぐるみが置いてあったわけでもでもないし・・・

シンプルって云うのか、実用的って云うのか、そんな感じだったんだけど・・・

今だって、そんなに大きく変えたわけではないし・・・

晴香が机の前に座って参考書とか手に取ったり、本棚の前で小説開いたりしている

晴香の態度からすると・・・概ね、気に入ってくれたようだけど・・・

「孝は、どんな子が好きなの」

「え?」

後ろを向いたまま、晴香が質問してくる。

また、訳の分からない質問を・・・ど、どーゆー意味だろう・・・表情見えないし・・・

「え、う、うん・・・あ、あの・・・晴香・・・」

振り返った、晴香を見ながら、途惑ってしまう。

あ、しまった・・・外したかな?・・・ん?そうでもないのかな・・・あ、やっぱり、外した?

うわ〜、分からないよ・・・どっちかと言えば、話を切り替えたほうが良さそうだ・・・

「晴香、あの・・・あの時はありがとう」

「え、あの時?」

「うん。温泉に行った時の・・・水都さん達に、連れて行かれそうになった時も、結局、

晴香の機転で助かったんだよ・・・晴香が、水都さんに『誘ってくれてありがとう。

混浴の時間帯だし、後から行くかも』って、言ってくれたおかげだよ」

「ああ、あれね」

「晴香には、いつも感謝してるんだよ。いつも、助けてくれるのは晴香だもの」

「でも、あれは・・・きっと、水都さん達にヘンタイさんみたに思われてるよ」

「そ、そんなことは・・・ないと、思うけど・・・」

そうか、助けてくれた晴香に迷惑かけているんだ・・・

ヘンタイさんのことも問題だけど、原田さんが晴香を見る目が変わったっていうのもあるし・・・

他にも色々心配事が出来たんだ・・・

「それって、孝のくせ?」

「は、はい?」

「親指の爪、噛んでたわよ」

「え?そ、そんなことしてた?」

「う、うん・・・それで、体の調子とか・・・おかしなところはない?」

「え?体の調子?・・・ん、今のところ不都合はないけど・・・」

「ふ〜ん・・・」

「・・・えっ・・・と・・・晴香はきちんと切り替えが出来てるから・・・私は・・・出来ていないところ

あるけど・・・」

晴香は私やお母さんといる時と他の事情を知らない人がいる時と・・・態度、言葉使いまで

使い分けてる・・・しかも、以前の私とも違和感がないように・・・それに、晴香の理想も少し

入っているみたいだし・・・すごく器用っていうか・・・

「そうかな・・・」

「そうそう」

「う〜ん、そうなのかな」

あ、晴香、この間から、自分の行動に自信なくしてるんじゃ・・・

演技でやっていて、元の自分が解らなくなった・・・ってところかな?

そんなの、元の体に戻れば、行動も戻るって思うけど・・・考えすぎるところが晴香の

欠点だよな・・・晴香なら、女の子に戻れば、理想の女の子だって演じることが・・・

あれ?今、何か・・・引っかかったような・・・

「孝、爪・・・」

「えっ・・・あ」

また、親指の爪噛んでた。お、おかしいな・・・こんなくせなんてなかったはずなのに・・・

「・・・それ・・・私のくせ・・・だった」

「へ?・・・あ、なーんだ、晴香のくせを体が覚えているんだ。ピアノの弾き方も覚えていた

くらいだもの」

「え・・・あ、そーうなんだ・・・」

「???」

晴香、何か、別のことを考えていたのかな?・・・あれ?晴香に話しかけられる前に、何考えて・・・

あれ?あれ?・・・ま、いーか・・・

「晴香、来週から学校だね・・」

「え・・・うん」

また、複雑そうな晴香の表情・・・今日の晴香、おかしい・・・

「晴香、お茶入れてあげるから、ピアノ弾いてね」

「いいけど・・・」

あ、反応してくれた・・・よし・・・

「う〜ん、何弾いてもらおうかな・・・」

「何でもいいけど・・・1曲百円ね」

「え〜〜、お茶入れてあげるのにぃ」

「お茶は、孝のサービスぅ」

「そんなのひどぉ〜い・・・」

一気に、元に戻ったって感じだぞ・・・それにしても、あんまりだ・・・

「お昼もつけてくれるなら・・・ね」

「え、あ・・・そのくらいでいいの?」

「え、うん・・・・・・ちっ、簡単すぎたか・・・」

じとぉ〜・・・晴香って・・・でも、普段の晴香がいい・・・





今日から、2年生だ・・・ちょっと、ドキドキしながら晴香と登校。

お父さんが出張から、無事帰ってきたことと、晴香にもお土産買って来てくれたことを報告する。

ついでに・・・『今日も、家に寄ってね』って、晴香と約束する。えへっ。

クラス分けの結果を早く見たいと、途中から走って行った水都さんと原田さんが駆け寄ってくる。

「晴香、一緒のクラスよ」

クラス分けの貼り紙の前には生徒があふれかえっている。

こっちに気がついたコースケが話し掛けてきた。

「おい、コージの名前がないぞ・・・」

「えっ」

「コージは留年か」

コースケがこっちのほうを見ながら呟く。

「え?名前が書いてない?・・・そ、そんなはずは・・・」

ま、まさか・・・1学期の成績と2学期の前半の成績が悪くて留年ってことは・・・

そ、そんなことは、ないよな・・・冗談・・・じゃないよ。

確かに、成績は悪かったけど・・・低空飛行ぎりぎりだっただったけど、墜落までは・・・

うわ〜あ、なんか、汗出てきたぞ。

貼り紙に駆け寄ろうとした時、

「日高君の名前ならあるわよ・・・私達と同じA組よ」

水都さんの声にコースケが振り返えった。

「え?あれ?コージ、文系クラスにしたのか?」

コースケは、ちょっと驚きの混じった声を上げた。

う〜ん、そうか、コースケは、晴香が理系クラスを希望したと思っていたんだ。

いつ元に戻れるか分からないからって晴香が言うから、自分の希望を書いて出したんだよ。

でも、よかった、留年かと思ったよ。・・・ホント、良かった。

涙が出そうになるくらい嬉しいぞ。

「よかった。晴香、また同じクラスだね」

「孝・・・文系クラスにしてたんだ・・・」

「?」

晴香、どうしたんだろう?

「やっぱり、私たち一緒のクラスでしたね」

「うん。やったね。うちの神様、すごいでしょう」

「ホントに・・・はあ〜っ」

何、溜息ついているんだろう?

やっぱり、晴香の様子がおかしい・・・

「?・・・何、溜め息ついてるの?」

「な、なんでもないよ」

おかしい・・・晴香の様子がおかしいぞ。きっと、何かある。

「とにかく、新しい教室に行きましょうか」

水都さんの言葉にうながされて、新しい教室に向かって歩き始めた。





「・・・1年間、宜しく。じゃあ、クラス委員を選出してくれ」

あ〜あ、やっぱり、担任は朝霞先生だったか・・・嫌な予感はしていたんだよ。

あっちでもそう思ってたりして・・・

えっ、ま、まさかっ・・・

あ、そ、そーだった、今は、白石晴香だった・・・

優秀な生徒が、自分のクラスでよかった・・・なんて、思ってたりして・・・でも、若くて

かっこいいお兄さんみたいな先生だったらよかっ・・・あ、あれっ?

若くて綺麗な女の先生だったらの間違いだよな。なんか、最近、ボケてきたかな・・・

う〜ん、色々あったし、ちょっと疲れてるんだよ、きっと。・・・

「・・・白石・・・おい、白石」

「へっ・・・あ、は、はいっ」

後ろから、晴香に突っ突かれてしまった。

「どうした?初日から寝てたか・・・白石も、学校に馴染んだと云うか・・・」

クラスの皆に思いっきり笑われてしまった。・・・もう・・・

「なんですか?先生」

「なんだ、聞いてなかったのか?白石がクラス委員に選出されたんだよ」

「えっ」

後ろを振り返ると、晴香が頷いた。

い、いつの間に・・・聞いてなかった・・・皆、自分がやるの嫌なもんだから、適当に指名したな。

何処のどいつだ。一体、誰が推薦なんてことをしたんだ・・・

「ぶつぶつ言ってないで、後の委員を決める議事の進行をやってくれ」

「は、はい」

くそっ・・・あ、失礼しました・・・もう、また、笑われちゃったじゃないか・・・

「それでは・・・」

・・・

う〜ん、やはり、誰もやりたがらない・・・独断と偏見・・・いや、自分の楽の為・・・かな?

推薦、立候補がないなら・・・ビシバシ指名。・・・自分の楽の為とはいえ・・・ごめんね。

・・・と思いながら容赦なく・・・なんだなこれが・・・

「ほお、さすが、白石だな・・・鮮やかだ。人選も・・・いい。よし、選出された委員は、別途・・・」

半年も強制的に遣らされたんだから・・・自分が楽するためにはどうしたらいいかぐらいは、

学習するよ。

へへっ、そして、晴香は副クラス委員に・・・晴香、手伝ってね・・・というより、頑張ってね。

よ〜〜し、今年も、楽するぞっ。

・・・晴香に、聞こえないように心の中で囁いた。




晴香がトイレへ行った後、水都さん達を捕まえたんだ。

晴香ったら、最近は『トイレ行ってくるな』って平気で言って行くんだもの・・・デリカシーが

ないって言うか・・・そんなのも、いいけどさぁ・・・

「晴香、何?今日はこの後、新入生獲得のミィーティングがあるのよ」

「え、あ、じゃあ、見てる暇ないかな・・・これ」

裕香お姉さんが撮った写真を机の上に広げた。

「ああ、これって、この間の・・・」

「旅行の時の写真ですね」

「あ〜や、少しくらい遅れてもいいよね」

「真美ちゃんったら・・・そ、そうですね」

「はは・・・あ〜やだって」

そう云いながら、ふたりが椅子を寄せてきて座った。

「あ・・・この写真ふたりで分けてね。欲しいのがあれば、お姉ちゃんが焼き増しするって」

「ありがとう・・・晴香はいいな。あんなお姉さんがいて」

「そ、そうかな・・・」

「そーですよ」

ま、変わったところもあるけど・・・いいお姉さんだよな・・・確かに。

「なんか、晴香ったら、照れてる・・・あれ?でも、この写真・・・晴香達の写ってる写真が少ない」

「えっ」

「あ〜〜、見られたらまずい写真があって、隠したな」

う・・・鋭い・・・

「そ、そんなことは、ないって・・・」

「ホントかな・・・」

水都さんの鋭い視線・・・な、なんとか、かわさないと・・・

「あ、それよりこの写真・・・すごいタイミングでしょう・・・真美ちゃんが転びそうになってるとこ」

原田さんにつられて・・・真美ちゃんになっちゃった

「え、ああ、坂道で滑って・・・この後、転んじゃったんだっけ・・・」

「それが、これね」

「ああっ・・・なんで、そんなシーンもあるのよ」

水都さんが慌てる。・・・思いっきり、尻餅ついてるところ・・・

「真美ちゃん、私にも見せてよぉ」

「え・・・こほっ・・・この手の下にある2枚の写真は・・・掛け声とともに・・・3、2、1、ハイッ

・・・消えました」

「あ、真美ちゃん、ずるいっ」

な、なんだ?・・・手品?

「ふ〜ん、いいですよ・・・では、消えた写真は・・・3、2、1、ハイッ・・・真美ちゃんの

ポケットの中です」

「うっ・・・あーやも、見ていたの・・・」

「ほらね」

自慢げに、原田さんが水都さんのポケットから、写真を取り出している。

「それ・・・手品?」

「あれっ?晴香は見てなかったんだ・・・マジックショーやってたんだよ」

「1日のテレビですよ・・・私なんか、チャンネル争いに負けて、部屋で独りで見てたんですよ」

「へ〜え、あーやでも、チャンネル争いなんてするんだ・・・」

ちょっと、以外・・・

「チャンネル争い?」

「ええ・・・裏番組は、子供が初めてお使いにいく・・・」

ぎくっ

「コ、コ、コーセーは、やっぱり、マジックショーだよね」

「晴香?・・・口、廻ってないよ・・・でも、晴香、見てなかったくせに」

「う・・・わ、私も、見たかったなあ」

「え?・・・再放送すると思うけど・・・」

「今度は、見逃さないようにする・・・うん」

「あ、日高さん」

晴香が戻って来たみたいだ。

「そこで、臣先輩に会った・・・明日、打ち合わせしたいから、時間作れって」

「あ〜〜、しまったぁ、私達も、ミーティング忘れてた。あーや、急ごうよ」

「やだぁ、部長に、怒られそう・・・」

「晴香、写真、貰ってくね」

「う、うん、引き止めて、ごめんね」

水都さんと、原田さんが、慌ただしく走っていく。


そ、そ−か、裏番組はマジックショーやってたのか・・・

なんか、ちょっと、ほっとしたりして・・・





第13話 終了




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第13話
孝司と晴香シリーズ