「ただいまあ〜」

「おかえり・・・あら、晴香・・・」

「・・・」

晴香ったら、途中で、帰ろうとするんだもの・・・やっぱり、今日の晴香おかしい・・・

「孝ちゃん・・・お土産を理由にして、晴香を無理やり引っ張って来たでしょ」

「ええっ、あ・・・そ、そうなんです・・・けど・・・」

「出来るだけ、晴香と一緒に居たいのよね」

「あ、あ・・・そう・・・」

後は、言葉に出来なくて・・・頷くだけ・・・

お母さんにバレてるじゃないか・・・

でも、お母さん、何で、急にこんなこと言い出したんだろう・・・

こんなに、はっきり言われると・・・恥ずかしいよォ・・・

「ほら、晴香、これだけ慕われて、男の子冥利に尽きるわね・・・解っているんでしょ。

大事にしなさいよ」

「・・・」

晴香・・・複雑そうな顔・・・晴香だって、面と向かってこんなこと言われると、恥ずかしいよね。

あ、電話だ・・・チャンス

お母さんが電話に出ている隙に、晴香の腕を取って囁く。

「は、晴香、お土産預かっているから・・・部屋へ行こうよ」

「う、うん」

晴香も、ちょっと、ほっとしたみたい。




「はい・・・これ、お父さんから預かってたお土産・・・」

「うん」

「お父さんたら・・・日高君には、絶対にお土産買わなくちゃって思って、これ、

買ってきたみたい・・・」

「へえ・・・」

晴香が、お土産を鞄へ仕舞おうとする。

「あれ?開けてみないの?」

「あ、家へ帰ってからにする・・・大体、予想つくから・・・」

へええ・・・そうなんだ・・・やっぱり、付き合い長いものね・・・って・・・それにしても・・・

「晴香・・・どこか調子悪いの?」

「別に、悪いところなんかないよ」

「それなら、良いんだけど・・・」

でも、やっぱり、元気がないように見える・・・何かあるんだろうか・・・

「晴香、変わったこと・・・ない?」

「え・・・あ、母さんが・・・知り合いの仕事を手伝うって・・・」

「へえ・・・どんな?」

「あ、よく聴かなかったけれど・・・またって言ってたかな・・・それから・・・朝が早いとも

言ってたかな・・・」

ふ〜ん・・・またって言っていたって・・・時々手伝ってたあれかな・・・そうすると・・・

でも、そんなことで元気ないわけじゃないないと思うけど・・・

「あ、お茶、入れてくるね」



「孝ちゃん、晴香、様子おかしくない?」

「え・・・あ、そ、それは・・・母さんが仕事で、お弁当作って貰えなくなるから、

悩んでたみたい」

「え・・・そうなの?」

「う、うん」

お母さんも、晴香の様子が変だと思ったみたいだ。

お母さんまでに心配かけることないよね・・・晴香のことは、出来るだけ、私が

何とかしてあげたいし・・・

「晴香に内緒で、お弁当作ってあげようと思っているんだ」

「晴香をびっくりさせようとしてるの?」

「うん・・・お母さん、内緒だよ」

「ええ・・・あ、孝ちゃん・・・晴香のこと、お願いね」

「え・・・うん」

お母さんに期待?されてる・・・なんか、ちょっと嬉しいような気分・・・

よ〜し、明日は頑張るぞ・・・でも、何、作ろう・・・






「おはよう・・・晴香」

「おはよう・・・孝」

「お土産・・・どうだった?」

「・・・孝から、有難うって言っておいて・・・」

「え・・・う、うん」

そんな会話をしながらも・・・ついつい、鞄の中のお弁当に意識がいっちゃう・・・

ああ・・・なんか、ちょっと、ドキドキするなあ・・・

このお弁当渡したら、どんな顔するかな・・・

喜んでくれるかな・・・学校中、走り回ったりして・・・それは、ないか・・・

でも、ちょっと、元気だしてくれたら・・・嬉しいな



教室に入って席について・・・ひとつ深呼吸をしてから、晴香のほうへ向き直った。

「晴香、これっ・・・お弁当なんだけど・・・」

「えっ・・・」

ドキッ!・・・あれ?反応が予想と違う。

「あ・・・あれ?・・・あ、母さん、お弁当作って行ったの?」

「ううん」

「え・・・じゃあ・・・迷惑だったのかな・・・」

なんか、胸が・・・キュンって・・・苦しくなった・・・

「ううん・・・パン・・・買うつもりでいたから・・・ちょっと、びっくりして・・・」

「あ、ホント・・・良かった。晴香が好きそうなもの、作って入れてきたんだよ」

「あ、ありがとう・・・孝」

一瞬迷惑だったのかと思ってしまった・・・びっくりしたぁ

笑顔で受け取ってくれるものとばかり思ってたから、あんな顔されると、ホント、びっくりするよ。

前々から、お弁当作ってあげたいと思ってたけど・・・きっかけがないと・・・渡しにくいし・・・

昨日の夜から、何作ろうか考えてて、なかなか寝つかれなかったし・・・朝は、朝で・・・

早くから目が覚めてしまって・・・今日は、ちょっと眠たいかも・・・ふぁ〜あ〜・・・


眠気を・・・我慢しながら・・・

時間が過ぎて・・・



そうして・・・

晴香が、お弁当食べてるのを見て、幸せな気分になって・・・

「こら、白石、クラス委員が廊下を走るな!」

「あ、先生・・・す、すいません」

う〜、失敗、失敗・・・私が、学校中、走り回ってもしかたないよね・・・



あ〜、眠い。早く帰って寝よう・・・

帰ろうかと思ったら、晴香に呼び止められた・・・

「孝、先輩、待ってるよ」

「あ、そうだった・・・忘れてた」

幸せな気分を抱いて・・・寝るつもりだったのにぃ・・・


久しぶりの生徒会室。

「久しぶりの出番だな」

「はい?」

一体、なんなんだ?

「いや、なんでもない。ふたりを呼んだのは、他でもない・・・」

ううっ、やっぱり、例の話か・・・

「ちょっと、待ってください。晴香ならともかく、今の私には大任過ぎます」

「なんだって?」

「こ、孝っ」

晴香が慌てる。

「あ、いえ、その・・・なんでもないです」

失敗、失敗、今日は眠くってボケてるのかも・・・

「まあ、日高のサポートがあるから、問題はないだろう・・・

日高でも、悪くはないと思うんだが・・・面白くない。面白くないというのも

変なんだが・・・どうせなら、前例の無い事をやってみたいしな」

先輩、それが本音ですね・・・それに・・・確かに、サポートしてもいいと言いましたけど

・・・それは、私の方なんですよォ。

は〜っ、そんなこと口に出して言えないし・・・


あ、でも、考えてみたら、生徒会の時も、晴香と一緒に居られるんだ・・・

これは、仕事がどーのこーの言うより、こっちの方のポイントが高いかも・・・う〜ん


なんか・・・考えているうちに・・・そうなってしまったみたいだ・・・

もう、何でもいいや・・・晴香と一緒なら・・・


「新入生が来ればすぐに選挙だぞ」

選挙か・・・

いつ、新入生が来るんだっけ・・・あ、そうか、明日が入学式だった・・・

そうだ・・・さっきまで入学式の飾りつけやってたんだっけ・・・やっぱり、ボケてる?

「あ、そう言えば、先輩・・・入学式の伴奏は・・・」

「あ、いや、ブラスバンドと・・・その・・・緑川に頼んだ」

やっぱりぃ・・・

さすが、水都さんの情報網・・・最近、先輩と緑川さんが一緒にいるのをよく見るって言ってたもの

晴香、今の聞いていてくれたかな・・・どんな顔するんだろう・・・

あれ?・・・晴香、ぼーっとしている・・・今の聞いていなかったみたい・・・がっくり。

ちょっと、こーゆーことはしっかり聞いててよね。

「そ、それより、応援演説を誰に頼むか・・・だな。うん」

ああ、先輩・・・矛先を変えようとしている・・・

「対抗は須藤か・・・」

そーか、須藤君か・・・じゃあ、大丈夫かも・・・須藤君、人望もあるし・・・うん、絶対、大丈夫だ。

この眠い頭でも、そう思える・・・

へへっ、やったね。私って、ついてる・・・

「適当な・・・いなかったら、日高だな」

むっ、晴香で十分じゃないかっ・・・と思いつつ、晴香のほうを見ると・・・ああっ、まだぼーっとしてる。

「なんだ・・・頼りないな」

「え・・・はあ」

晴香も、眠いのかな?

・・・

「そんなところだな・・・あ、日高は、も少し話が・・・」

「あ・・・はい・・・」

「じゃあ、教室で待っているからね」

・・・はあ〜、やれやれ・・・





「白石さん」

「す、須藤君」

「聞いたよ・・・副会長に立候補するんだって」

「え、あ・・・まあ・・・」

いつの間にか、そんなことになってしまっていたんだよ・・・ぶつぶつ・・・

それにしても、情報、早いなあ・・・

「日高が補佐やるって聞いたよ・・・」

「はあ・・・そうなんだけど・・・」

何処から、聞いてくるんだろう・・・まさか、先輩が情報をリーク・・・

「白石さん、俺に、応援演説やらせてよ」

「え〜〜っ」

た、確か・・・ライバルは、須藤君だって・・・

「ダメかな?」

「そ、そんなことないけど・・・須藤君は立候補しないの?」

思わず、口に出ちゃった・・・

「え、俺・・・今年は野球に専念したいんだ」

あ、そうか・・・須藤君は野球部だっけ・・・

う・・・それを言われると・・・帰宅部の私としては辛いものがあるな・・・

「・・・それに・・・白石さんだったら、安心して任せられるし・・・」

そりゃあ、本物の晴香だったらね・・・そー思うけど・・・

「最近の白石さん、輝いてるよ・・・日高がいなかったら、俺が立候補したいよ・・・」

「は?」

何?

でも・・・なんか、まず〜い方向に進んでいるんじゃないかな・・・

須藤君がいなかったら・・・当選確実?・・・来年は生徒会長・・・げっ

私は、純粋な帰宅部がいいのにぃ・・・晴香と一緒に(ココが重要なのよ)・・・

「あ、じゃあ・・・考えておいてよ」

「え、う、うん」

困ったことになったな・・・と、思って、後ろを振り返ったら、晴香が立っていた。

あ、晴香、今の聞いていたかな?

「あ、晴香、聞いてた?」

あれ?晴香、怒ってる様な・・・


「あ、晴香ってば・・・」

何も言わずにドンドン行っちゃうし・・・なんなんだ?

先輩に、何か言われたんだろうか・・・

お〜い、晴香ってば・・・






入学式

ふ〜ん・・・可愛いじゃないか・・・

まあ、中には、ほんとに新入生?ってのもいるけど・・・概ね、可愛い・・・

あ、近所の剛もいる・・・そうか、私の後輩か・・・

去年の私達も、あんな風だったのかななんて、思ってしまう・・・

どっちにしろ、先輩になったんだよな・・・

・・・


晴香、同じ電車じゃないと思ったら・・・早く来て先輩の手伝いしてるし・・・

・・・ちょっと、ほっとしてたりして・・・

・・・

そー言えば・・・朝、電車の中で、水都さんと原田さんが・・・

「晴香、元気ないね・・・今日の新入生へのビラ配り、手伝わせてあげるね」

「はい?」

手伝わせてあげる?

「よろしい・・・いい返事ね」

「えっ」

「ま、真美ちゃん・・・晴香さん、有難う御座います。手伝って下さるんですね」

「よし、3人でやれば、確実に渡せるわ」

・・・配るのは、どうやら、クラブの勧誘ビラらしい・・・


・・・っていう訳で、帰宅しようとしている新入生に、一生懸命、ビラを・・・

「はい・・・宜しくお願いしまぁ〜す」

って、感じで・・・ん?

「あのォ・・・先輩、テレビに出ていませんでしたか?」

「はい?」





第14話 終了




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第14話
孝司と晴香シリーズ