短い休みが終わっって、日常が戻ってきた様な気がする。

通いなれた道・・・元々、こっちが本当で、１週間が偽りだったのかも・・・

ホームに、佇む晴香を見つける。

晴香さえいれば、どっちでもいいんだ・・・駆け寄って、声を掛ける。

「晴香、おはよう・・・これ、日記」

「おはよう・・・」

晴香は、日記を受け取って鞄に入れる。・・・けど、なんか、ちょっと、元気なさそう・・・

また、入れ替わっちゃったショックが大きいのかな・・・でも、先輩の話は、伝えておかないと・・・

「晴香、昨日先輩に・・・」

昨日のことを晴香に伝える。

「ふ〜ん、先輩、そんなこと考えていたんだ・・・私は、Ｂ組の須藤君かと、思ってたけど・・・

ホントは、孝ならいいなって思ってた」

「え？・・・ムリムリ、絶対ムリ。補佐役だってムリ」

「そうかなあ・・・」

「それより、晴香、元気なさそうだけど・・・どうしたの？」

「え・・・うん、昨日、ちょっと遅くまで起きてたから・・・」

「寝不足？・・・大丈夫？」

「うん」

晴香、そんな遅くまで何してたんだろう・・・

「孝、電車来たよ」

ホームに入った電車に乗り込む。

電車に乗り込むと、水都さんと、原田さんがいた。

「おはよう」

挨拶を交わすと水都さんが、早速、話しかけてきた。

「ねえ、聞いた？進路調査があるみたいよ。クラス分けの」

水都さん、早耳・・・でも、ついこの間まで受験勉強やってたのような気がする・・・って、

全然やらなかったんだっけ・・・受験日前日にコースケとゲームやってるところを、

先生に見つかって怒られたっけ・・・よく、この学校受かったよな・・・

ああ、また、受験受験って言われるのか・・・ヤダなあ・・・

「孝、何考えてるの」

「ん、ちょっと、昔を思い出して・・・」

「へえ、昔・・・どんな」

「ん、受験日前日にゲームやってるところ、先生に見つかって怒られたこととかさあ・・・」

「孝っ、そんなことしてたのっ」

「えっ」

し、しまったぁ、晴香の誘導尋問にひかかってしまった・・・まずい。

「そ、そんなの・・・冗談、冗談よ。私がそんな事・・・ほ、ほら、水都さんたちも驚いてるじゃない」

水都さんと原田さんが目を丸くしている。

「う、受けなかった？」

笑顔を作って、尋ねる。

「冗談か・・・びっくりしたぁ。でも、考えてみれば、晴香がそんな事するはず無いわよね」

「晴香さん、すごい冗談でした。一瞬信じちゃいました」

「う・・・そうだよね。白石さんが、そんな馬鹿なことするはず無いよね」

晴香、それ、きついよォ・・・

「でも、今日はいつもの晴香だね」

水都さん、それも、きついよォ・・・

「コホ・・・でも、皆、進路決めてるの？」

「そこが問題なんですよ・・・これで、将来決まちゃいますから」

う〜ん、そうだよね。原田さんの言うことも、もっともだと思うけど・・・将来か・・・

あ、私の場合は・・・どうすれば・・・晴香に希望を言っておけばいいのかな？・・・でも、特に希望

なんてまだ考えてないし・・・で、私は、晴香の希望で進路選んでおけばいいのかな？・・・それは、

戻れた場合になるけど・・・もしも、戻れなかったら・・・晴香の希望の仕事に就く事になるのか・・・

晴香、どんなのが希望なんだろう・・・女医なんて言われたら、ヤダなあ・・・血、嫌いだし・・・

あ、でも、お嫁さんなんて言ってたよな・・・専業主婦で、昼寝して・・・これなら楽かも・・・

でも、そんなこと言ったら、主婦の人に怒られちゃうな・・・でも、魅力的な職業だな・・・

「孝、何考えてるの」

「ん、ちょっと、将来のことを・・・」

「へえ、将来・・・どんな」

「ん、専業主婦なんかいいなあって・・・」

「孝っ、そんなこと考えてたのっ」

「えっ」

し、しまったぁ、また、晴香の誘導尋問にひかかってしまった・・・まずい。

「そ、そんなの・・・冗談、冗談よ。私がそんな事・・・専業主婦する場合って、相手が要るんだよ」

「孝、それ、私じゃ不満ってことなの」

「え、あ、あれ？」

「あはは・・・、晴香たち面白い・・・ふたりで漫才師にでもなるの？」

「晴香さん、すごく受けましたよ。今の」

あ、同じことを２回もやれば・・・そうだよね・・・

「うん、漫才師ねえ・・・それも、いいかも」

「ふ〜ん・・・漫才師は文系かな？理系かな？」

「あ、多分、就職組・・・」

わああ、晴香、そんなに睨まないでよ。でも、少し元気出たかな？

それより、なんか、最近、ボケ役が板に・・・



学校へ行くと、水都さんの情報通り進路調査用紙が渡された。

家で相談して提出しなさい・・・か

でも、このレベルの調査なら、前にも書いた様な・・・でも、なんて書いたんだっけ・・・

何も考えずに、コースケと同じにしたかも・・・

相談と言ってもなあ・・・今は・・・そうだな、晴香のでも参考に



「晴香、コレ、なんて書けばいい？」

晴香に紙を見せながら、問いかける。

「どういうこと？」

「晴香の希望をこっちに書いて、私の希望をそっちに」

「・・・最初から、自分の希望を書いて、交換すればいいじゃない」

「な、なるほど、晴香頭いい」

ちぇっ、うまくいかなかったか・・・

「はあっ、孝、嘘下手ね・・・顔に書いてあるよ。・・・私のを参考にしようとしたんでしょ」

「あ、う・・・は、晴香、何でわかっちゃうの？」

「やっぱりね・・・希望とか考えたことないの？」

「う、うん、ない・・・」

「やってみたいこととかは？」

「別にぃ・・・」

「興味あることは？」

「え？特には・・・」

「ああ、もう、優柔不断なんだから・・・好きなものとかないの？」

「え、あ、好きなもの・・・えーっと、は、晴香」

「え・・・あ、そ、そうなの？」

「う、うん」

「・・・」

「・・・」

「やっぱり、漫才師やる？」

「・・・」

やっぱり、自分で考えるしかないか・・・



帰り際、水都さんが声を掛けてくる。

「晴香ぁ、明日、いいかな？」

いきなり、何？明日？

「結婚式のお手伝いの話」

そうだった、元の身体に戻ったときＯＫしたんだっけ・・・たしか、力仕事で・・・

・・・そう言えば、晴香にも手伝ってねって・・・言ってたな・・・

ああそうか、今、晴香なわけだから・・・

「でも、来週でしょう、それ」

「本番はね・・・」

本番？・・・水都さん、何、させる気？

「で、練習を明日どうかなあって」

「練習って？」

「うん、舞の練習」

舞？・・・えーっ、舞を舞え？

なんか、クラクラしてきた。

そんなの出来るのかなあ・・・舞なんて

「あ、まさか・・・日高君も舞うの」

「やあねえ、日高君は、単純に、テーブルを並べたりするのを手伝ってもらうだけなの」

「と、すると・・・日高君は、晴香・・・つまり私を釣るための餌・・・だったってこと？」

「え、わかっちゃった」

わかっちゃった・・・って、言われても・・・

「あーやも一緒なの・・・そのォ、晴香がやるって言えば、あーやもやってくれるって・・・

晴香は、日高君が一緒ならやってくれるでしょ・・・だから・・・」

そ、そんな図式だったのかぁ・・・って、私も餌なの？

「お願いっ、晴香っ」

「う、うん、一度引き受けたんだから、ちゃんとやるよ・・・」

「よかったぁ・・・あーやも前は、無条件で引き受けてくれたのに、最近は、『晴香さんと

一緒ならやってもいいよ』なんて、条件つけるのよ。・・・すっかり、晴香のファンなのよ」

「ファンって、言われても・・・」

「そうよね・・・あ、で、明日は、９時に神社でいいかしら？」

「うん、わかった」

「じゃあ、あーやにも、伝えてくる」

そう言って、水都さんは手を振りながら教室を出て行く。


帰ろうと思って、晴香の方を見ると・・・あれ？姿が見えない。

え〜〜、まさか、水都さんと話してる間に帰っちゃったの？

今まで、こんな事なかったのに・・・

用事があるときは、ちゃんと言ってくれたのに・・・


駅まで走ってみたけど・・・１本前の電車で行ったみたいだ・・・

なんか・・・胸にぽっかりと穴があいたみたい・・・


家へ帰って、電話してみたけど・・・母さんが出た・・・晴香は、まだ帰っていなかった

・・・何所へ行っちゃったんだろう・・・


夜・・・日記に向かっている。

昨日は、向いてないと思ったけど・・・誰にも言えないこの気持ち・・・

日記に書き留めるしか出来ない・・・




第２話　終了




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