月曜日にねっって、言ってたつもりなのに・・・日曜日に、孝から電話が。

部屋の模様替えしたから、見て欲しいって電話・・・

ちょっと、心が重い・・・けど、隠してきたものも気になるので、出掛ける事にした。




「へ〜、綺麗に片付けてあるのね」

ちょっと、以外。

この様子だと・・・あれには、気づいていないみたい。

「ホント？」

孝が、ちょっと嬉しそうな顔をした。

「うん、女の子の部屋みたい」

ホントに、部屋が可愛くなったような・・・

何処が？と、問われたら・・・はっきりしないんだけど・・

孝も、ぬいぐるみとか置いてる女の子の方がいいのだろうか？

実際にはそんなもの置いてはないけど・・・

男の子側から見たら・・・やはり、らしく見えるもの・・・

「孝は、どんな子が好きなの」

「え？・・・え、う、うん・・・あ、あの・・・晴香・・・」

はい？・・・振り返って、孝を見つめてしまった。

見つめてって云うより・・・凝視に近かった。

タイプを聞いたのに・・・私の名前が帰ってくるとは思わなかった。

いや、それでも、いいのだけど・・・いつまでそう答えてくれるか・・・不安。

「晴香、あの・・・あの時はありがとう」

言葉を捜しているうちに、孝に話題を変えられてしまった。

「え、あの時？」

「うん。温泉に行った時の・・・水都さん達に、連れて行かれそうになった時も、

結局、晴香の機転で助かったんだよ・・・晴香が、水都さんに『誘ってくれてありがとう。

混浴の時間帯だし、後から行くかも』って、言ってくれたおかげだよ」

「ああ、あれね」

「晴香には、いつも感謝してるんだよ。いつも、助けてくれるのは晴香だもの」

「でも、あれは・・・きっと、水都さん達にヘンタイさんみたに思われてるよ」

「そ、そんなことは・・・ないと、思うけど・・・」

・・・いくら、孝を守るためとは言え・・・女の子に言う台詞じゃなかった。

孝の人格が疑われてるかもしれないし・・・今は、まだ、いいけど・・・

いつ戻れるか、分からないし・・・まだ先だけど、修学旅行とかもある。

孝の場合・・・その場になって、目を回しかねない。

今から・・・って、ちょっぴり、悔しい気がする。

でも・・・ん！

「それって、孝のくせ？」

「は、はい？」

「親指の爪、噛んでたわよ」

「え？そ、そんなことしてた？」

まさか・・・

「う、うん・・・それで、体の調子とか・・・おかしなところはない？」

「え？体の調子？・・・ん、今のところ不都合はないけど・・・」

「精神的なところは・・・」

「精神的？・・・えっ・・・と・・・晴香はきちんと切り替えが出来てるから

・・・私は・・・出来ていないところあるから・・・」

ちょっと、不安だって言いたいのかな・・・

まさか・・・精神が体に引っ張られるなんてこと・・・な、ないよね

「そうかな・・・」

「そうそう」

「う〜ん、そうなのかな」

ドキッ・・・また・・・

「孝、爪・・・」

「えっ・・・あ」

「・・・それ・・・私のくせ・・・だった」

「へ？・・・あ、なーんだ、晴香のくせを体が覚えているんだ。ピアノの弾き方も

覚えていたくらいだもの」

「え・・・あ、そーうなんだ・・・」

そうか・・・そういうことも・・・あるか

「？？？」

孝は深く考えないみたいだけど・・・ほっ

「晴香、来週から学校だね・・」

「え・・・うん」

・・・月曜日か。

どう転んでも、嫌な結果が待っている。

今は考えるのやめよう・・・

孝との時間だもの・・・いつもの様に過ごそう・・・

「晴香、お茶入れてあげるから、ピアノ弾いてね」

ん、交換条件か・・・

「いいけど・・・」

「う〜ん、何弾いてもらおうかな・・・」

「何でもいいけど・・・１曲百円ね」

これくらいの要求はしておかないと・・・私は、公平なんだから。

「え〜〜、お茶入れてあげるのにぃ」

「お茶は、孝のサービスぅ」

「そんなのひどぉ〜い・・・」

そぉ〜かな？・・・それじゃあ

「お昼もつけてくれるなら・・・ね」

「え、あ・・・そのくらいでいいの？」

そのくらい？

「え、うん・・・・・・ちっ、簡単すぎたか・・・」

うわっ、しまった・・・聞こえちゃったかな？

孝の目が三角に・・・聞こえちゃってるぅ

・・・

「え？これ？」

練習曲？？？・・・まあいいか

「ふ〜ん、そんな風に弾くんだ・・・」





２年生・・・１学期の始業式・・・

クラスが別になれば・・・ポケットの中のものを渡す・・・

残念だったねって言って、ポケットの中のものを渡せば・・・孝は喜んでくれるはず。

毎日、教室まで迎えに行けばいいんだ・・・簡単なこと。

そう、自分を納得させた。

・・・

駅のホームで待っていると、孝がやってきた。

遅刻のギリギリに登校してきていた孝が・・・今は、余裕持って登校してるんだから。

「お父さんが出張から、帰ってきたんだ。今日も、家に寄ってね」

なんか・・・私にもお土産があるらしい・・・中身は予想つくけどね。

今日の孝は、ちょっと、緊張気味・・・あ、私も。

孝のドキドキがこっちまで伝わってくる。



昇降口のところまで来た時、水都さんと原田さんが走り寄ってくる。

「晴香、一緒のクラスよ」

あ・・・

よ、予想通り・・・といえば、予想通りだけど・・・ちょっと、動揺・・・

「おい、コージの名前がないぞ・・・」

「えっ」

コースケ君の声にびっくり。

まさか、落第・・・留年・・・

なんて、孝みたいにボケかましてられない・・・きっと、見落とし・・・

「コージは留年か」

コースケ君の冗談交じりの声。

数人の生徒が振り返る。

皆・・・何考えてるのよ。

「え？名前が書いてない？・・・そ、そんなはずは・・・」

孝まで・・・声、震えちゃって・・・

「日高君の名前ならあるわよ・・・私達と同じＡ組よ」

と、水都さんの声。

ドキッ

「え？あれ？コージ、文系クラスにしたのか？」

コースケ君の驚きが混じった声・・・

え、孝が文系クラス希望・・・した？

水都さん達も文系？

私の考えが浅かった？

でも、それにしても、１／３くらいの確率のはず・・・

「よかった。晴香、また同じクラスだね」

「孝・・・文系クラスにしてたんだ・・・」

「？」

貼り紙を確認しても・・・間違いない・・・

「やっぱり、私たち一緒のクラスでしたね」

「うん。やったね。うちの神様、すごいでしょう」

そう、その神様が問題なのよ・・・

「ホント・・・はあ〜っ」

「？・・・何、溜め息ついてるの？」

孝が・・・危ない危ない。

「な、なんでもないよ」

「とにかく、新しい教室に行きましょうか」

水都さんの言葉にうながされて、新しい教室に向かって歩き始めた。

前の教室のちょうど真上・・・２階なんだけど・・・

ちょっと、足が・・・重い・・・


教室に入り、空いている席に座ると・・・前の席に孝が座った。

孝としては、隣に座りたかったのかもしれないが・・・

あいにく、塞がっていたんだ。

水都さんと原田さんも孝の傍の開いてる席に座った。

あちこちで、グループの輪が出来上がって・・・ワイワイガヤガヤ・・・

孝の所にも・・・孝は半分私の方を向いているので、輪の中心に

いる様な感じ。

教室の前の扉がガラッと開いて、朝霞先生が入ってきた。

皆、お喋りを止めて、自分の席へ走っていく。


まずは、始業式。


再び教室に入り席に着く。

朝霞先生が担任かぁ・・・あ、別に不満があるわけじゃないけど・・・

ぼんやり、そんなことを思いながら、孝の方を見る。

孝はなんだか、残念そう・・・孝が担任になって欲しかった先生って・・・

国語の柴田先生かな・・・若いし、優しいし・・・そんなところかな・・・

でも、今年結婚される予定じゃなかったかな？

「このクラスの担任の朝霞だ。１年間、宜しく・・・」

クラス委員を選べ・・・か。

クラス委員か・・・１年の時は、強制的だったんだっけ・・・

２年にもなれば、どんな人がいるのか分かってくるしね。

なんて思っていると、早速推薦・・・

「白石さんを推薦します」

あらら・・・やっぱり、そうなるのか・・・

でも、私じゃないし・・・ラッキー・・・なんてね。

他になしか・・・全員一致・・・みたいね・・・

「それじゃ、白石、後の委員を決める議事進行やってくれ」

頑張ってね、孝。

ん、孝ったら、ぼ〜っとしている。

「・・・白石・・・おい、白石」

先生が言うのと、私が小突くのと同時だった。

「へっ・・・あ、は、はいっ」

「どうした？初日から寝てたか・・・白石も、学校に馴染んだと云うか・・・」

もう・・・孝ったら、恥ずかしいじゃない・・・

「なんですか？先生」

「なんだ、聞いてなかったのか？白石がクラス委員に選出されたんだよ」

「えっ」

全然、聞いてないんだから・・・

「ぶつぶつ言ってないで、後の委員を決める議事の進行をやってくれ」

「は、はい」

もう、また、笑われちゃって・・・

「それでは、誰か、立候補か推薦して下さい・・・」

・・・

やはり、誰もやりたがらないんだよね・・・さて、孝はどう裁くのかな・・・

「う〜〜ん、困りました・・・推薦、立候補する人がいらしゃらないので、

アミダっていう方法とかもあるんですけど・・・時間の関係もあるし、私からの

提案ということで・・・ここは、強制的にクラス委員にされちゃった白石さんが

決めちゃっていいですかぁ？」

えっ・・・それが提案？そ、そんなので良いの？

「反対意見とか、ありますかぁ？・・・誰も意見出してくれないし・・・

他には、ないですよねぇ・・・」

笑顔で・・・半分脅迫？

「良いんですね・・・私と同じく、拒否権なし、ですよぉ・・・」

かなり、私怨も入ってる？

「それじゃぁ・・・大変な役は、後にして、最初は・・・」

独断と偏見でビシバシ指名してる・・・いや、でも、いい人材を選んでる・・・

私には・・・こんなやり方、出来ない・・・

最後に、私を副クラス委員に・・・こ、孝・・・やってくれたわね〜

でも、補佐程度だから・・・それほどのことでもないか・・・

誰からも嫌だって言葉は出てこなかったけど・・・

「ほお、さすが、白石だな・・・鮮やかだ。人選もいい・・・」

先生も、そんなので良いの？



孝は、水都さん達に、例の写真を渡すって・・・それじゃあ、その間に・・・

「孝、トイレ行ってくるから」

孝がまた変な顔を・・・困ったような、嬉しそうな・・・そんな顔されても・・・


Ａ組が一番遠い・・・トイレの話だけど・・・Ｅ組の隣で階段との間にある・・・

他のクラスの前を歩いて行くわけなのだけど・・・

ミーティング中のクラスもあれば、帰り支度しているところもある・・・


トイレから出て・・・教室へ戻ろうとした時、見知った顔を見つけた。

臣先輩と緑川先輩・・・ふたりも、こっちに気がついたみたい。

「あ・・・ひ、日高・・・明日、打ち合わせをしたいから・・・白石とふたりで、来てくれないか」

「は、はい・・・」

ふたりは体育館の方へ向かって歩き出した。

体育館は２年のフロアとつながっているんだ。

Ｃ組の前まで来た時、ふたりの女子がこっちを見ていた。

ちょっと、おとなしそうで、可愛い感じの女の子・・・

すれ違う時、隣の子が、その子の袖を引張ってた・・・

「ほら、ヨーコ・・・」

「？？？」

孝になってから、こんな光景を・・・時々・・・見るけど、なんだろう？

「おい、コージ」

名前を呼ばれて振り向くと、二つの笑顔があった。

ユーキ君と花梨ちゃん・・・

軽く手を上げ、挨拶・・・・

「Ｃ組？一緒のクラスだったんだね・・・良かったね」

「有難う、コージ君」

なぜか、花梨ちゃんの笑顔がまぶしい・・・

「それで・・・この間の話だけど、ピアノの・・・花梨の意思は固いみたいでさ、

時間の空いてる時で構わないから、教えてやってくれないか？」

「いつでもいいよ・・・白石さんにも、言っておこうか？」

「ううん、あっちのコージ君には、びっくりさせたいの」

ええっ！？

花梨ちゃんの発言に驚く私。

ユーキ君を見ると・・・訳が分からないって感じで肩をすくめて

両手を持ち上げて見せた。

「はは・・・そ、そう。あっ、そ、そうだ、あの子達・・・あれ？」

・・・いない・・・帰ったのか・・・

「な、なんでもない・・・いつでも、言ってね。花梨ちゃん」

「うん・・・次の日曜・・・ダメかな」

「うん。わかった」

「それじゃ、コージ・・・頼むよ」

「あ、ユーキも一緒にやらないか？」

「えっ・・・俺が？・・・無理だよ。触ったこともないし・・・」

「そんなに気負わないで・・・暇つぶしだと思って」

「一緒にやろうよ。大勢の方が楽しいよ」

「・・・そうかぁ、じゃあ、やってみるか・・・」

花梨ちゃんの笑顔、ユーキ君のちょっと、困ったような顔・・・

花梨ちゃんの笑顔、守りたいって云う孝の気持ちは大事にしないとね。

「それじゃ、次の日曜日に」

ふたりに、軽く手を振って、教室に向かう。


あ、弥生。

Ｂ組の教室から出て来た弥生と、バッタリ。

「木下さん・・・Ｂ組？」

「あ・・・日高君・・・」

「ウカナイ顔してどうしたの？・・・あ、また、クラス委員にさせられたんだ」

「えっ・・・それも、あるけど・・・日高君は？」

「ううん・・・副クラス委員。晴香に無理やり」

「そっか、晴香と同じクラスなんだ・・・無理やりって・・・晴香機嫌悪いの？」

「別に、そんな訳ではないけど・・・」

「晴香、機嫌悪いと問答無用だもんね。もう、ビシバシよ」

そ、そんなこと・・・してたのかな・・・

「そ、そーなの？はは・・・今から、帰るところ？」

「うん、そう・・・ちーが彼とダメになったって、これから自棄食いの付き合い・・・

あっ、と・・・今の内緒ね・・・あ、日高君、ちーのこと知らないか・・・晴香にも

しばらく黙っていて・・・お願い」

「う、うん・・・」

・・・ショック・・・あの、仲良かったふたりが・・・


弥生が歩いて行く、後姿を見ながら、教室へ入る。

僅かな距離だったけど・・・色々なことがあった様な気がする。


見ると、孝の方も話がおわりそうだ。

「そこで、臣先輩に会った・・・明日、打ち合わせしたいから、時間作れって」

孝に向かって、声を掛ける。

「あ〜〜、しまったぁ、私達も、ミーティング忘れてた。あーや、急ごうよ」

「部長に、怒られそう・・・」

「晴香、写真、貰ってくね」

「う、うん、引き止めて、ごめんね」

水都さんと、原田さんが、慌ただしく走っていく。


はあ〜っ・・・ちょっと、ため息。

なんか、疲れた・・・早く帰って、横になりたい・・・

ああ、そうも、いかないんだっけ・・・これから、孝と一緒に・・・

はあ〜っ



番外編（１−８）　終了




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